軽快な音楽なのに、何だか重い…
中学校吹奏楽部のレッスンに行った時のこと。
この学校には身体の使い方、音楽の流れについて、アンサンブルをするということについて、
全体合奏や個人レッスン、パートレッスンなど様々な形で関わらせていただいています。
この日、顧問の先生からレッスン前に聞いたのは、
「アップテンポで軽快な曲が重くなってしまっていて…。アーティキュレーションもハッキリしないんです。」
演奏を聴かせていただくと、確かに重〜い印象でした。
躍動感が欲しい
この時演奏していた作品は、ゆったりな曲と軽快な曲の2曲の作品。
ゆったりな曲の方は曲に合った柔らかい音色で演奏されていましたが、
軽快な曲に変わり、テンポが早くなって音の移り変わりが早くなっているのはわかるものの、その音には躍動感が足りない!と感じました。
ジャンプを例にとって考えると、
飛ぶスパンはゆっくりで、飛んでいる高さは低く、着地するごとにズドンズドンと両足を地面に叩きつけているような感じ。
でもこのような軽快な曲で欲しいのは、
ケニア人がピョンッピョンッと飛び上がるように、スピードがあって、弾むように高さも出て、次のジャンプにもすぐに移れるほどの軽さを持った躍動感。
その躍動感を生み出すために解決の糸口になったのは、息のスピードでした。
息のスピードはテンポや曲想、音の連なり方によって異なる
私としては、曲のテンポや曲想、音の連なり方に合わせて、息のスピードも異なると思っています。
だからこそ、音の微妙な差異(ニュアンス)が出て、音に動きが生まれるのです。
スローテンポの曲や柔らかな大きなフレーズで流れる部分では、
息もゆったり、大らかに流れるイメージです。
例えば、テーブルの上に折り鶴を置いているとします。その折り鶴を息でゆーっくり動かすぐらいのスピード。
逆に、
アップテンポの曲や歯切れの良いスタッカートや短かいフレーズの部分は、
息はシュッと早めで、竜巻を起こす勢いのスピード感のイメージ。
例えば、テーブルの上に置いている折り鶴を、息で遠くへ弾き飛ばすぐらいのスピード。
もちろん、1フレーズの中でも微妙な息のスピード・量は異なりますね。
ロングトーンをするとき、「息は、一定の量、一定のスピードで」なんて聞いた覚えがあるのですが、
曲を演奏するときに、そのように吹くと、「音程は変わってるのにのっぺらぼう」な演奏になってしまうのが想像できますでしょうか。
息の量とスピードを変幻自在に変えることで音に動きがもたらされるのだと思います。
「軽快な曲で重くなる」というのは、
・息のスピードが曲のテンポに合うぐらいのスピードが出ていない
+
・フレーズによる微妙な息の差異が生まれていない
この2点が影響しているのではないかと思ったので、
楽器を吹くのは置いといて、この曲に合う息のスピードを捉えるために、次のような練習をしてみました。
息だけで音楽を表現してみる
1曲目のテンポは、周りを見渡しながら歩くぐらいの速さで、
2曲目のテンポは、ジョギングするぐらいの速さです。
実際に私が動いてその音楽の速さの違いを見てもらい。
2曲目のジョギングする速さの中で、
音楽のフレーズのまとまりを大切にしながら
リズムが動いていくことを想像して、
①息だけで数小節ずつ、音楽を表現していく練習
拍感、リズム、音の連なりによって、息の量・スピードは異なります。
それをシュッシュシュッシュと示しながら一緒にやりました(・3・)💨
プロによる模範演奏があるのであれば、それに合わせて息だけで表現・模倣してみるのも良いと思います。
同じフレーズの中でも、音の動きに合わせて息を巧みに変化させていることに気付けるのではないかと思います。
②楽器で①で練習した息で吹いてみる
タンギングはせずに、息だけで。
音が外れても良いから、息の動きで音楽を表現することを意識して。
③②の息の流れに、タンギングを付けて吹いてみる
タンギングはあくまでも息のサポート程度に舌でチョンっと。
タンギングで音が鳴るのではなく、息が音を生み出します。
これだけで、音の躍動感、推進力、音楽の流れへの積極性が増え、
本人たちもその音の変化がわかったようで、
「最初吹いていたのはドタドタと重くてつまづきそうな感じがあったのが、音がハッキリしてきて軽くなった感じがします。」
「吹きやすいです!」
と感想を言っていくれました。
管楽器の音楽表現の要はどうしたって息
管楽器は「息」での表現が音に表れます。
音の動きを出したいなら、その音を生み出すための息を量・スピード共に変幻自在に動かしていくことが大切です。
「息だけで音楽を表現する」というのは、楽器を使わずにできるとても有効な練習になると思います。
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